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My Favorite things
~私をつくる いくつかの好きなこと~

2026年2月27日

慌ただしく過ぎていく日々のなかで、ふと立ち止まる瞬間があります。
診療に向き合う毎日だからこそ、心をそっと支えてくれるものの存在を、以前よりも大切に感じるようになりました。

健やかに生きるために必要なのは、治療や予防だけではありません。
身体を整えることと同じくらい、心が安らげる時間もまた、大切なのだと思います。

「長寿の秘訣は趣味をもつこと」と言われます。
けれど私は、それを特別なものにする必要はないと思っています。
大切なのは、自分の心が自然に向かうものがあること。
それが日々を整え、静かな支えになるのだと感じます。

私にとって、その一つが犬との暮らしです。

もともと犬は少し苦手でした。
しかし数年前に飼い始めてから、その存在は日常に穏やかな変化をもたらしました。

毎朝の散歩や週末のお出かけは、私にとって小さな楽しみであり、生活のリズムを整えてくれる大切な時間です。
家族みんなにとっても大切な存在になっており、なついてくれる姿を見るたび、心がほっと温まります。

もう一つは、ラグビーです。

中学・高校・大学、そして今に至るまで続けてきました。
競技を通して学んだのは、体力や技術だけではありません。
仲間を信じること、自分の役割を果たすこと、困難な局面でも前を向くこと。
プレーだけでなく、観るのも大好きです。
試合や観戦のひとときも、私にとって小さな喜びです。
ラグビーを通して得られる熱量や仲間との絆は、日常に刺激と楽しみを与えてくれます。こうした経験は、年月を経てもなお、自身の土台となっています。
ラグビー好きの方はぜひ、話しかけてください。

そして三つ目が読書です。

週に1〜2冊を目標に、主に通勤時間を読書にあてています。
年間ではおよそ80冊ほどになるでしょうか。
移動時間を、情報を消費する時間ではなく、思索を深める時間へと変える。
その積み重ねは、わずかでも心の輪郭を整えてくれるように思います。

近年は小説を読むことが多く、たとえば
凪良ゆうさんや
辻村深月さん、
青山美智子さん
などの作品に親しんでいます。

物語は、他者の人生を疑似体験させてくれます。
異なる立場や価値観に触れることは、自分の思考を柔らかくし、想像力を静かに鍛えてくれます。

毎年楽しみにしているのが「本屋大賞」です。

今年のノミネート作品の中には、医師であり作家でもある夏川草介さんの『エピクロスの処方箋』も含まれています。
これまでも『神様のカルテ』や『スピノザの診察室』で、医療の現場を誠実に描いてこられましたが、本作もまた、人が生きることの意味を静かに問いかける作品です。

医療に携わる一人として感じるのは、医療とは単に病を治す行為ではなく、人の人生に伴走する営みであるということです。
そのためには、知識や技術に加えて、「相手を理解しようとする想像力」が欠かせません。
読書は、その力を養う時間でもあります。

犬との時間も、ラグビーも、読書も、決して特別なものではありません。
けれどそれらは、忙しない日常の中で、自分自身を整え、立ち返る場所になっています。

世の中には不安や理不尽な出来事もあります。
それでも、小さな喜びや誰かの優しさは、確かに日常の中に存在しています。

良かったこと。
感謝できること。
心が少し動いた瞬間。

そうしたものに目を向けながら、過度に揺れすぎず、しかし鈍くもならず、しなやかでありたいと思います。

好きなことは、人生を華やかにするためというよりも、
人生を静かに支えるためにあるのかもしれません。
今日も一冊の本を手に、帰路につこうと思います。